新・ドラゴン危機一発

おすすめランク D

原題:新唐山大兄
出演:
ドニー・イェン(甄子丹)
アテナ・チュウ(朱茵)
ユイ・ロンクワン(于榮光)  他

監督:ドニー・イェン(甄子丹)
1998年度作品

ドニーの暗黒時代と勝手に思っている時期の作品(笑)

『ある貧しい村に診療所を開業するため、トン・サン(ドニー・イェン)と助手のボン(チャン・チンパン)がやってくる。ある日、その地域を牛耳るフータウ団がカジノ建設のため、村人に立ち退きを要求する。村人が拒否したため、乱闘が始まり、ボンが我慢しきれずフータウ団と対決、見るに見かねたトンも参戦するのだった。

フータウ団のボス、ユー(ユイ・ロンクワン)には妹のシン(アテナ・チュウ)がいて、しゃべることのできない障害を抱えていた。シンの病状を知ったトンは、彼女を手術し、シンは話せるようになる。そして、二人は次第に惹かれるのだった。

ある日、村に住む複数の子供が、内臓を摘出された状態で水死体となって発見される。トンは、犯人の手掛かりを掴もうと動き始める。トンの動きを知ったユーと黒幕は、でっちあげてトンに罪を着せようと、陰謀を企てるのだった・・・。』

ドニーは、本作と同時期に製作していた「ドニー・イェン COOL」で発生したトラブルが背景にあり、あまり乗り気ではない状態で、本作の出演を決め、監督と主演を務めたそうだが、その乗り気でないのが、充分に伝わってくる仕上がりだったな(汗)

序盤のフータウ団が立ち退きに応じない村人とバトルするシーン。短いカット割りや、顔のアップを多用してる時点で「あー、粗悪作品だぁ。」と呟いてしまった。

キャストはメインの4人以外は、全て本土の人。出演シーンの多かったシンの看護役や、ユーの部下役ですら、これまでに本作含めて2作しか出演作がないようなレベルの見知らぬ人を起用。・・・予算を削りまくってるよな(笑)

子どもたちが水死体で見つかるシーン。全員、目を開いた状態なんだけど、複数人がワンカットでうつるシーンで、カメラが動く際に、若干、1人だけ目が動いたのは、それはそれはコワかった(笑)

本作のアクションシーンは、後ろ向きの人物が替え身なのは当たり前で、引きのシーンの多くも替え身。ユイ・ロンクワンがドニーと握手するシーンですら、顔が丸見えなのにロンクワンじゃない(汗)。「もう、見えてもええんちゃう?」って開き直ってるのが垣間見える(笑)

終盤で、ユーの部下が誤って、シンに致命傷を負わせてしまうシーン。フータウ団では、絶対やってはいけない掟のようで、ユーはその部下を殺害。すると、周りの手下が集団で、その死体をボコボコ蹴りまくってる。・・・怪しい宗教団体かと思うくらい、なんか気持ち悪い演出だったな(汗)。って、そのボコボコシーン、↑の動画ではカットされちゃってるし。

本作で最大級にびっくりしたシーンは、クライマックスのドニーとロンクワンのガチンコバトル。ドニーに連続蹴りしてるシーンで見えてはいけない物が(笑)。”以手代脚”と呼ばれる、腕と手にズボンと靴を履いて、脚に見立てて蹴りのシーンを撮影するのは、香港映画ではよくやるけど、それをやってる人物の顔と上半身が、一瞬、うつっちゃってるのよ!(爆)。これをうつしたら、絶対ダメでしょ!

発売時に購入し、未だに読み返してる谷垣さんが書いた「燃えよ!!スタントマン」に本作の裏話が書いてあったけど、興味深かったな。製作は黒社会系の製作会社。この会社が1996年に「古惑奇兵之兵行險著」を製作した際、本土で撮影したフィルムが使い物にならず、大損。本土側で関わった会社が賠償金を払えないため、次作でスタジオ、フィルム、スタッフを格安で提供し賠償する約束になり、そういった経緯で製作されたのが本作。ドニーたち香港スタッフは香港と四川を何度も往復し、格安ギャラで携わることになった本土側スタッフは働かず、いろいろ大変だったそう。

その「古惑奇兵之兵行險著」って作品が、日本でもDVD化されてる「少林寺十八銅人」だったとは。お子様が十八銅人してるジャケットだったから、児童向け対象作品と思って、未だに観たことはないな。

モニターがなかったから、撮影直後のチェックができなかったって書いてあったけど、モニターは必要不可欠でしょうに(汗)。ドニー自身が演じたシーンを、撮影直後に監督としてチェックできずに、カメラマンを信用するしかないって、ありえない状況(笑)。ラッシュフィルムを見たドニーは、怒り狂ったみたい。

ボヤ~っとしたソフトフィルターを使ったシーンが多く、それもあったりなかったりしてたのは、モニターチェックができなかったことが起因の、フィルターの外し忘れだったりして?(笑)

子どもが誘拐され、臓器売買や人身売買の犠牲になってるって、メディアがあまり取り上げないだけで、世界中で相当数あるらしいのよね。麻薬よりも大儲けできる闇ビジネスみたい。本作の黒幕みたいに「この子供たちは、社会の役には立たんが、実験では役に立った。」って考えの差別的な人って、実は想像以上に多いのかも。

谷垣さんの本で、ドニーが出演した経緯や、製作過程が大変だったのはよくわかったけど、ドニーファンになりたての少年がそんなことは知らずに「ドニーが「ドラゴン危機一発」のリメイクをしたんだ!観てえ!」と、なけなしの小遣いでDVDを購入してガッカリしてるのを想像すると、やりきれない気持ちになってしまうな(笑)