いつの日かこの愛を

おすすめランク 
原題:伴我闖天涯
出演:
チョウ・ユンファ(周潤發)
チェリー・チェン(鍾楚紅)
ラウ・コン(劉江)  他
監督:リンゴ・ラム(林嶺東)
1989年度作品

『拳銃密売の取引現場に急襲をかけた刑事ラウ(チョウ・ユンファ)。犯人たちは逃走し、惨劇のあとには一味らしき女の死体と、幼い娘カカの姿が。事件の鍵を握る女の実家は、中国本土からの移住者たちが暮らす新界の村だった。ラウは死んだ女の妹シュー(チェリー・チェン)に捜査への協力を求める。捜査を進めるうちに、二人の間には密かに恋が芽生え、その絆は強く確かなものになっていく。しかし、事件の背後にいる武器密輸の追っ手が迫り・・・(DVDジャケットより引用)』 

ユンファとリンゴ・ラムが設立した製作会社シルバーメダル第一回作品。物語の骨組みはユンファが考え、ユンファの希望でヒロインはチェリーに決まった。

ユンファとチェリーの恋愛過程よりも、登場人物の”病み=闇”状態が気になってしまったな。ユンファがチェリーの姉の家に捜査に行くシーン。怪しい二人組を取り逃がした際、同乗していたチェリーに、「君のおかげで失敗さ。君の目は節穴か?」といきなりキレて八つ当たりしてチェリーを泣かせるユンファ(汗)。過去、犯人の逆恨みで妻子を殺され、抑えてる感情がこういう態度に現れてる。

チェリーの家族が負のスパイラルに陥ってるのは、父親が毒親なのが全ての元凶。チェリーの姉が犯罪に関わるのも、幼少期に親から愛情をもらえなかったのが遠因だろうし、チェリーが父親に逆らえない状態なのも、支配的に育てられたのが見え見え。

一番かわいそうなのが、カカ。幼い子供が「私を捨てないで。」って泣きじゃくる状況ってひどすぎるだろ。大人になったら愛着障害で苦しむパターン。あの年齢で、母親を亡くして、じじいから「売り飛ばす!」なんて怒鳴られてたら、完全にトラウマが植え付けられてしまってる。

ラウ・コン(劉江)演じるアールンのキャラが完全に自己愛性パーソナリティ障害だったな。嫉妬心強いし、自分の思い通りにならないと思った途端、ブチ切れして、恋敵のユンファに包丁振り回す有り様(汗)。自分の不倫が原因でチェリーと離婚に至ったのに、彼女と別れたってチェリーの前に現れ、チェリーが不在の間に引っ越してきて居座るなんて重症だわ。で、チェリーの気持ちも考えず、「よく考えたが、一緒に暮らすのが一番いい。」って言っちゃってる。・・・この”よく考えた”ってのが、自分に都合よく考えただけなんだよね。この病気のやっかいなところは、無知が原因で性格で片付けられちゃうのと、本人が心底気づいて治さないとダメなところ。指摘したら逆ギレするのを周りは感づいてるから、だーれも触れず重症化。こういう人たちから嫌な思いをさんざんさせられた身からすると、可能な限り離れるのが得策。こっちも病んでしまうので。

なんだか、リンゴ・ラム監督が作品で本当に伝えたかったことは、恋愛模様より、人々が気づかずに抱えている”闇”だったのかもしれないな。英題の”wild search”って深い意味が隠されてるのかも。

良いシーンだと思ったのは、ユンファとチェリーが横断歩道で若いカップルをはさんで、互いに視線を相手に向け、ユンファが照れを隠しつつ、さりげなくチェリーと手をつなぐところや、ユンファの目にゴミが入ったのを、チェリーが取り除こうとするシーン。互いに意識し始めてるのをうまく表現してたな。

ユンファの相棒役のトミー・ウォン(黄光亮)。「香港影圈四大惡人」の一人として、悪役での出演作が多いけど、本作では、珍しくいいキャラなのよ(笑)

主題歌はアニタ・ムイが歌う「月亮代表我的心」。「フル・ブラッド」ではテレサ・テンが歌うバージョンだった曲。

学生時代にVHSで鑑賞以来、何十年ぶりに観たけど、人生経験積んだせいか、DVDジャケットに記載されてるような”珠玉の名作”とは、それほど思えなかったな(汗)。「おいしいカレー」って自ら宣伝してる店ほど、たいしてうまくない説と同じ(笑)