リプレイスメント・キラー

おすすめランク C   

原題:THE REPLACEMENT KILLERS
出演:
チョウ・ユンファ(周潤發)
ミラ・ソルヴィーノ
ケネス・ツァン(曾江)  他
監督:アントワーン・フークア                        
1998年度作品

本作のレビューは劇場公開時に書いたものだけど、アツく語ってますなぁ!(笑)。1995年の「大陸英雄伝」を最後に、香港からハリウッドに旅立ったユンファの約3年ぶりの作品だったから、期待度MAXだったのを覚えている。面白くなかったので、あれ以来、観てないし、観る気もおきないけど(笑)

・・・というわけで多少、修正しましたが、1998年に書いたレビューをどうぞ!

“亞洲影帝”チョウ・ユンファのハリウッド進出作!ボクは劇場公開までどれだけ待ち望んでいたか!!

ユンファの登場シーン。「おー!!ユンファ!」って叫びたくなるほどのかっこよさ!テーブルに“死”と刻まれた銃弾を置いてからの銃撃戦! スローでくるくる回転してからの銃撃!序盤から、こんなかっこいいユンファを見せてくれているから、期待しまくり!!だったのだが・・・。

はっきりいって脚本の出来がほんと、悪すぎ!観客が殺し屋ユンファに対する感情移入を全くできないから、ただ銃撃戦してる、 パスポート欲しがってるだけとしか思えなくなっている。

殺し屋ユンファの中国にいる家族のことなど、セリフだけでなく、ちゃんと映像で描写するべきだっただろう。“百聞は一見にしかず”の如く、 家族が組織に追われたり、家族とユンファが手紙や電話でやりとりするシーンとか入れないと、観客が「ユンファ!家族のためにはやくパスポート手に入れて中国に帰って!」という感情を沸き立たせることにはならんだろう。

あの警官の子供をなぜ、プロの殺し屋なのに殺すことをやめたのか説得力が足りない。
子供を殺すことができなかったユンファには、過去、友人の子供を殺したことがあったとか、銃撃戦の最中、自分の目の前で、通りかかった子供が殺されたとか、そういうトラウマを持っていて撃つことができなかったとかだと、殺し屋ユンファには弱い部分があったんだって観客に思わすこと ができて、子供を殺せなかった部分に説得力がでてきたと思う。あと、そういうことをしなくても、あの殺そうとした子供と偶然、ちょっと前に 会話したことがあったとか、ユンファとあの子供にちょっとした接点があったようにしてくれてもよかったと思う。

ちょっと気がついたことなのだが、ユンファが狙撃するシーンでは、明らかに照準が警官の頭を狙っていて、子供を狙う素振りなど見せていなかった のだが、後に子供を狙っていたと告白する時には、子供に照準をあわせている。こんなことでいいのだろうか!?

しっかし、ボスの息子が警官に殺されて、その警官の子供を殺すために殺し屋を雇ったけど、その殺し屋が裏切ったから、殺し屋と子供をボスが殺そうとするって、たったそれだけのことを87分もかけてするテーマなんだろうか?他の作品だったら、10分くらいで終わってしまう1つのシーン だと思うのだが。

ボスの雇った2人の殺し屋。まったく強くない!1人は刑事の子供を映画館で殺そうとするところをユンファにあっけなく殺されちゃうし、 もう一人はバカ丸出し。ラストの銃撃戦でユンファ一人を殺そうとしているだけのくせに、途中で見失って、頭にユンファの銃が突きつけられ 「チェック・メイト」とか、かっこつけてつぶやいて殺されてる。こんな奴ら、わざわざ雇う必要ないし。おまけに空港での登場シーンで延々とスローモーションで歩いてこっちに向かってくるシーンがあるのだが、「お前らがスローになってもしゃーないねん!」と思ってしまった(笑)

ラストの銃撃戦が、何にも迫力ない!ユンファがボスの乗る車を追いながら、まわりの敵に銃をぶっ放し、 車に飛び乗って、二丁拳銃で撃ちまくるまではよかったが、その後が、あっけなさすぎ!あんなのでいいんか?ユンファが一発くらい撃たれてケガをするとか、ボスがミラ・ソルヴィーノを人質にしてユンファを脅すとか、アクション映画には当たり前の法則を全く入れずに、 すぐにユンファの銃でボスは殺されて終わり。なんだかなあ・・・。ボスの腹心だった男も、殺しには素人のはずのソルヴィーノに後ろをとられ、 殺されてる。もう、あきれて笑ってしまった。

この作品は、何しろ敵の数が少なすぎ!ラストの銃撃戦では、ボス、腹心、殺し屋を除いた数が10人いるかいないか。 ユンファが次々と銃を出してくるけど、あの人数だったら、2丁拳銃で一人一発でも倒せた数だと思う。少なくとも20人は殺してくれないと、 凄さが伝わらないだろう。

それに、肝心な事として、1つのアクションシーンが短く、爆破シーンなど見せる演出が少ないため、せっかく観客が、 「ドキドキドキ!」っと気持ちを高ぶらせようしているのに、すぐにアクションが終わったり、ユンファとソルヴィーノが逃げ出したりするから、 その高ぶりが持続せず、「スゲー!」と思わせるに至っていないのだ。一応、この作品はジャンルがアクション映画なんだから、このドキドキ感 があまりなかったことが、致命的だったと思う。

ミラ・ソルヴィーノがユンファに協力するってところも、「別に恋愛感情が芽生えたわけでもないのに、どうしてそんなに協力するの?」と納得がいかない。ソルヴィーノは偽造パスポート屋なわけだから、事情がある人々がお客さんなわけで、その一人一人に「あなたの気持ち、 よくわかるわ。協力してあげる。」なんて言ってたら、体がいくつあっても足りない気がする。ここは、どうしたってユンファとのキスシーン などを入れて、観客にそういう感情があることを思わせなきゃダメだろう。

欧米人が日本を映画に出してくるときに、日本人が見たら、「なんじゃいこりゃ!」と思ってしまうシーンが多々あるように、“これぞCHINA!” ってなイメージを出しすぎ。ボスの息子がボートに乗っているシーンの、ボートに漢字で書かれた数字。すごい不自然だった。数多く香港映画 見てきたけど、あんなことしているの見たことない!

この作品、スローがたくさん使われているのだが、無駄なところが多すぎ!いくらハヤリだからといっても、使いすぎるとダラダラしすぎて しまって、眠たくなってしまう。ジョン・ウーの技法はかっこよく思わせるためのものであって、それがほんとに思わせてくれるから すごいのだが、どうでもいいシーンでもスローになっているから、「またかい!」って思ってしまう。せっかくユンファが出演しているん だから、ベレッタ2丁をぶっ放している時に、スローにして薬莢が飛ぶくらいはしてくれないと!!。はっきり言ってスローのシーンを普通に撮したら、60分くらいに短縮してしまうかも・・・。

なんかこれだけボロクソに書いていると“おすすめランクE”になってしまいそうだが(笑)、おすすめランクCになったのは、 ユンファのチラッとみせる演技がすばらしいからである!ユンファが狙撃するシーンの、殺すのをあきらめた時の表情なんて、 「さすがはユンファ!」と一緒に観に行った友人とそこだけで盛り上がってしまったくらいすばらしい!つまり、ユンファ演技度A、 脚本度Eで、総合Cになったわけである!(「うわー、ユンファびいきだー!」という声が聞こえる(笑))

全米ではこの作品の公開時、初登場で「タイタニック」に次ぐ堂々2位にランキングされた。その後は7位と下がっていったが、それだけ全米で ユンファが知られ、期待が高かったのはすごいことだと思う。

パンフレットに書いてあったアメリカの雑誌の批評には、納得のいかないところが多かった。「チョウ・ユンファは 伝説になろうとしている。」って・・・(笑)。“伝説”って言葉は感じがいいけど、この作品だけでこんなこと言ってたら、これは大ウソだわ。 これを書いた雑誌の人は、きっと、香港でのユンファの作品をほとんど見たうえで、「この俳優はほんとにすばらしい!こいつは将来、伝説になるだろう!!」と思って書いてくれているのだろうな(期待薄(笑))。

「中身の濃い娯楽アクション作である本作で目を釘付けにさせたチョウ・ユンファ。」・・・ユンファの演技には釘付けになったけど、よくもまあ、 “中身の濃い”なんてこと書けるなあ。作品、ちゃんと見てないんじゃないの?

極めつけは「チョウに脱帽」(笑)。これ書いた人は全てのユンファ作品を見まくっているんでしょうなあ。よくもぬけぬけと・・・。長年のファン をバカにしてるのか!?絶対そんなこと思ってもいないってこと丸わかりじゃないか!どう考えても、映画会社に頼まれて、書く言葉なくて書いたって感じじゃないか!どこに脱帽したのか、説明してもらいたいよ、まったく!

この作品の予告編はムチャムチャかっこよかった!!予告編だけで言ったらおすすめランクAだった。はっきり言って、あんな予告編作って、 配給会社も罪作りだわ。あれ見て「スゲー!」と思って見に来た人は、きっとガッカリして帰っていったと思う。予告編は疑ってかかるべし!