チャウ・シンチー マイ・ヒーロー

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原題:一本漫畫闖天涯
出演:
チャウ・シンチー周星馳
ウィルソン・ラム(林俊賢)
シン・フイオン (成奎安)
アン・ブリッジウォーター(柏安妮)  他
監督:レオン・カーヤン(梁家仁)
1990年度作品

『クラブのボーイとして働いていたシン(チャウ・シンチー)は、漫画が大好きで特にハードボイルド系が好きだった。ある日、シンは客としてやってきていた組織のボスの命を救い、それがきっかけで組織の一員になることに。組織にはシンが漫画で憧れていたような男、ジュン(ウィルソン・ラム)がいて彼と行動を共にするようになっていった。

ボスの命令でタイに麻薬の交渉に行くジュンとビル(シン・フイオン)に同行することになったシン。彼らに待ち受けていたものとは・・・。』

いやあ、ひさしぶりに行き当たりばったりストーリーを見たわ(笑)

シンとジュンがアン(アン・ブリッジウォーター)と出会った途端に仲良くなっちゃってたり、タイで取引した麻薬を捌くためにどうにかしようとシンたちが動いていたのに、いきなりボスの後継者問題ネタになっちゃって、麻薬の話なんてどうでもよくなっちゃってたり、ストーリー展開に一貫性がなかったな。

レオン・カーヤン(梁家仁)演じるホンイーとの抗争をメインにしとけばよかったのに。途中でホンイーを殺しちゃったから、尺稼ぎするために、行き当たりばったりになっちゃう。本作の監督をレオン・カーヤンがしてて、監督作としては、これがまだ2作目だったので、途中で「あー!どっちもできん!!」って脚本変更しちゃったのかも(笑)

アンの存在がストーリーで全く活かされてないのもわからん。シンかジュンのどちらかと恋愛に発展したわけでもないし。ビルに新たな子供が産まれたのを祝うシーン。途中までいたアンが何の会話もなく席を立ったまま、ラストまで登場しなくなるのもいいかげん。

ボスの後継者問題に関しても、部下の多くがボスの息子が後継者になることに同意してるのに、ボスの右腕でもあったはずのビルとジュンを急に邪魔者扱いにして、抹殺しちゃう展開も疑問だったな。で、最終的にボスは息子に殺されちゃうし。ここは、真相を知ったシンが復讐のためにボスを殺す展開にすべきところなのにね。 

で、ラストシーン。しばらく登場しなかったアンが現れ、「ジュンはどうしたの?」と聞くと、シンが「ジュンたちは南極へ行ったよ。長い旅になる。俺も今から行くところさ。」と言ったところで劇終。・・・なんで唐突に南極なんだよ(笑)

本作でクスっくらいのレベルで笑ったのはシンチーとシン・フイオンのやり取り。これくらいしかほんとに笑えなかったのよ(汗)

シンチーがシン・フイオンに挨拶するシーン。近寄って来たフイオンに「口が臭いです。」と言ってしまうシンチー!(笑)。フイオンがキレかけてるのにさらに「本当に口が臭くて。」と二度も言えちゃうシンチー!!。こういうのって面と向かってなかなか言えない(笑)

タイでシンチーが女性を口説いてたら、後からフイオンがやってきて、シンチーを追いやってその娘と会話し始めると、シンチーが「俺が先に。」ってしつこく言うシーンも笑ったな。まあ、その娘は実は男でしたがオチだけど(←タイでは要注意(笑))。

特別出演ではなくユエン・ウーピン(袁和平)が役者として出演したのは、珍しかったな。80年代以降では数えるくらいしか出演作はない。演技がうまかったかはノーコメント(笑)

作品自体がジャンルをどこに位置づけたいのか、この作品を通して何が言いたいのかわからなかったな。復讐モノでもないし、サクセスストーリーでもないし。

本作は、長年、日本で未公開だったチャウ・シンチー作品が「カンフー・ハッスル」以降、続々リリースされた中の1本。DVDが発売されたのが2006年よ。1990年の作品が(汗)。1990年代前半の空前のシンチーブームの際に数々の主演作が製作されたのに、日本ではほっとんど劇場公開もソフト化もされなかったのが、今となっては異常だったよな。

本作は、デビューして以来、シリアスな役柄が多かったシンチーがコメディアンとしての資質を発揮するきっかけになった作品ではあるのだが、コメディっぽいところがあるにはあるが、まだまだシンチー本領発揮というわけでは全くない。

93年に当時、“ポスト・チャウ・シンチー”と言われていたディッキー・チョン主演で続編が製作されたが、ストーリーにつながりはない。

DVD発売時に本作を「伝説の初期傑作」なんて宣伝してたけど、傑作ではないでしょ。これが傑作だったら、どの作品も大傑作になっちゃうよ(笑)