天山回廊 ザ・シルクロード

おすすめランク B 

原題:海市蜃楼  

出演:
ユイ・ロンクワン (于榮光)
ツイ・シウミン (徐小明
パサ・ロマーニ
コニー・クァン  他

監督:ツイ・シウミン (徐小明
1987年度作品

ジャッキーにハマっていた中学生当時、金曜ロードショーでこの作品は放映されたが、子供心にすっごい映画だと思い、ボクとしては伝説の作品。

ストーリーはカメラマンのタン(ユイ・ロンクワン)が旅の途中、突然、空に蜃気楼が出現、そこにうつった絶世の美女にゾッコンになり、仕事もやめて、親友のマオ(ツイ・シウミン)を連れてあてのない“蜃気楼美女お探しツアー”をしちゃうというお話である。

はじめっからムリクリすぎるのは、空に映った蜃気楼がボヤーっと映すような演出もしてないピントがハッキリとした 映像。あそこまでしっかり映るってのは蜃気楼ではありえんだろ。おまけにそれをカメラで撮った写真もタンが持っていたカメラでは到底ムリなポートレート写真かと思うくらいアップでピントもあった写真。で、写った写真の女の顔立ちだけで、中国北西の女 と判断し、旅をしちゃうのだ。

しっかし親友のマオも「お前、アホか?一人で勝手に行け。」ってなんでならないのよ? タンなんか、はっきりいって夢の中に出てきた今まで見たこともない、いるかどうかもわからない理想の女の子を「俺のモノにするー!!」 って言ってる妄想男じゃん。

・・・でも、映画だからその美女に偶然出会ってしまうのね。でもその女はタンの思い描いていた女性ではなく、山賊の首領で 性格も最悪な悪女だったのである。理想と現実のギャップに幻滅したタン。だが今度は逆にその女がタンを好きなっちゃうのだ。 「私はシルクロードの女王よ。顔だって美しいし、姿もいい。権力、知性、財宝もあるわ。なんで好きにならないのよ! ここに残らなかったら殺してやる!!」だって。その女のアジトを逃げ出したタンだが、「キーーーー!!」とキレた女のストーカーぶりはすさまじく執拗に追いかけまくり、ついにはタンの肩を食いちぎるまでに至るのだ。(コワー!)

っとこんなストーリーなのだが、この作品がある一部(?)から評価が高いのは、人命軽視、危険極まりないアクション、スタント、 そして生物虐待(あかんがな。)の数々があったからなのである!

しょっぱな、タンが盗賊団に襲われるシーン。激しい銃撃戦と爆弾の嵐の中、一人の男が怖いと思ったのか木箱の中に隠れた途端、 その人入ったまんま木箱が爆破!その人、ワイヤーを吊るされてもなく、自然の爆風で吹き飛ばされ、もがいてる。(←重傷?)

タンとマオが車とバイクで逃走するシーン。タンの乗ったバイクが、たかーくジャンプしてバイクとタンが地面にほぼ同時に着地し、その 直後、爆破!完全に火に包まれてる・・・(←スタントマン死亡?)。マオは乗った車のブレーキがきかなくなり、その眼前には 「こんなとこマジであるの!?」とびっくりしてしまうくらいの高さの崖!車と一緒に落ち、ロープを投げて危機一発助かるというとんでもないアクションを披露。

アネッタの田舎で騎馬大会が開かれるシーン。いきなりアップで映ったのは子羊の死にたてと思われる死体。カメラが引いて、馬に乗った男たちが子羊めがけて突進してくる。子羊をボール代わりにして奪い合うという趣味の悪いゲームを繰りひろげる。

ラストの負傷者、死者(ぜったいいる)続出のバトルシーン。人が土壁が揺れるくらいさんざん打ち付けられるわ、火薬量を間違えたに違いないくらいの爆風で人は吹き飛ばされるわと次から次へと「人命軽視バンザーイ!」(←コラコラ!)と叫んじゃうシーンの続出!

特筆はマオ役でアクション監督もしたツイ・シウミンの2つの超スタント!シウミンはこの作品で監督、原案、脚本、スタント監修も しているので「これは俺の映画だ!俺の映画なんだあああ!」といいとこ持っていきたかったのだろう(笑)

まずは、2階で闘っていたマオの近くに手投げ弾が投げられ、2階から爆破と共に飛び降りるのだが、その爆破量がハンパではなく、ほんと爆破と同時に ちゃんと「俺がやってるでー!」と顔を上に向けてジャンプしているのだ!伝説の「群狼大戦」(主演のムーン・リーとシベール・フー が同じようなシチュエーションで火に包まれ大ヤケドを追った作品)での爆破量とはケタがちがうのでもしタイミングまちがっていたら 即死の可能性大。

もう一つは、マオが蜃気楼女と闘っている際、銃で胸を撃たれ、死を覚悟したマオは何を考えたか、自ら松明で体に火をつけ、 火ダルマになりながらバイクに乗り、火薬庫に突っ込んでしまうというとんでもないスタント。顔に炎が当たりまくってるし、 すごすぎの一言!他の作品でスタントマン使わずにやってるのって見たことない!

ま、ボクが思うに、自分がやりたかったと言う前に、スタントマンが他のシーンで負傷、重傷、死亡しまくってしまったので、 自分が一番危険なことをやらなくてはならなくなっちゃった可能性の方が高いと思う(笑)

この作品、エンディングで劇中にはなかったシーンがいくつかあるので気づいたのだが、日本公開の分、だいぶカットしてる可能性大。 あるエピソードで、主人公のタンが孤児院に入れられる際、連れてきた老人にスカーフを首に巻かれ、それを今でも巻いていて、 旅の目的が蜃気楼美女探しの他に親の手がかりを探すってのもあったはずなのだ。エンディングまでなーんにもそんな展開がなかったので、 またもや“行き当たりばったりストーリー”かい!と思っていたのだが、配給会社の東宝東和が90分にするためムリヤリカットしたのかもしれない。 もしそうなら、そういうことはやってほしくないよなぁ。

主演のユイ・ロンクワンは「ワンチャイ外伝 アイアンモンキー」のドニー・イェンの相手役、「D&D完全黙秘」ではジェット・リー の敵役など、多数のアクション作品に出演している人。「天山回廊」当時、27歳 だって。見えない(笑)

とにかくこの作品、未見の人は多いはず。邦題がダメ。喜多郎が音楽担当しそうな“NHKスペシャル”みたいだし。こんなアクション映画、もう作られることはないはずだから、多くのアクション映画ファンに観てもらいたいので、 DVD化、ブルーレイ化希望!!ツイ・シウミンインタビューやNG映像満載でよろしく!(笑)